メーカー	任天堂	発売日	2001-10-26
機種	GC	ジャンル	RTS
評価	★★★★

一見ほのぼのしたグラフィックの、SFリアルタイムシミュレーションゲーム。一般的には戦争をテーマにしたタイトルが多いジャンルだが、「未知の惑星の半植物型生物を使役する」という全く斬新なシステムを持った、宮本プロデュースの名作。

　● そして食べられる

　大変風変わりなゲームである。いわゆるRTS(リアルタイムストラテジー)と呼ばれるゲームの要素もあり、アクションパズルの要素もある。RTSとは、エイジオブエンパイアに代表されるようなゲームで、細かいユニットに色々と指示を出しつつ、リアルタイムで攻略していくゲームである。このピクミンは、それよりもアクションゲーム要素が強く、どちらかと言うとレミングスに近い。
　が、私は個人的には、ボコスカウォーズの系譜であると思っている。

　プレイヤーが操作するのは、ホコタテ星の宇宙船パイロットであるオリマーで、宇宙船で荷物を運搬中、事故に遭いどこかの惑星に不時着してしまう。宇宙船は壊れてしまったので困っていたところ、その星の生物であるピクミンに遭遇する(ホコタテ星のピクピクニンジンという野菜に似ているからオリマーがそう命名した)。
　ピクミンは植物のように地面から生え、引っこ抜くと自分の後をついてくる。そのピクミンをオリマーが投げ、食べ物のようなものを拾うと、ピクミンの母体である「オニヨン」という生物(？)まで勝手に運びはじめる。オニヨンは食べ物を摂取すると、新しいピクミンの種を生み出す。
　こんなようなピクミンの不思議な性質を利用して、遭難地点を含むいくつかのマップに点在している宇宙船のパーツを集め、最終的には宇宙に飛び出して母星に戻るのが目的である。

　このゲームは、RTS性はかなり低いと言える。一般的なRTSだと、ユニットAをここに動かして、その間にユニットBをここに動かして…などと細かく指定するが、ピクミンはもうちょっと大ざっぱだ。連れて行くのはオリマー自身が歩いて行って、戦ったり物を動かしたり仕掛けを反応させたりとかは、その場で投げる事で操作する。で、そこで拾ったものとかを巣に持ち帰るのが、自動なのだ。正直自動なのはここだけなので、すこーしストラテジー要素があるだけのアクションパズルと言った方がいい。
　ちょっとパズルっぽいのは、物の大きさによって、それを動かせるピクミンの数が異なる、というあたりにある。小さなものは、少ないピクミンで動かしたり破壊したりできるが、大きなものはたくさんピクミンがいる。で、一番最初は遭遇したわずかなピクミンしかいないので、まずは小さなものを運び、オニヨンから新しいピクミンを生んで、だんだん数を増やして行く。そうやって、ちょっと順番を考えないといけない。
　(もっとも、しばらくゲームを進めていけば、蓄えたピクミンを引き出す事が可能になるので、パズル要素はむしろ早解きする事に向けられていく)

　で、この惑星にはピクミン以外の生物もいる。そちらはオリマーやピクミンを狙って攻撃してくる事もあるので、必要ならば倒さないといけない。ピクミンを敵に向かって投げると、背中とかにへばりついて攻撃しはじめる。敵も時々は攻撃してきて、せっかく育てたピクミンの命を奪っていくが、数に物を言わせて倒す事ができる。生き物の死体は大体オニヨンの餌になるので、生き残ったピクミンに運ばせて、ピクミンの数を増やすために使う。
　この生き物たちは夜には凶暴になるので、日が暮れたらいったん空中に避難する。なので、オリマーたちは日中にしか活動できない。そして、この惑星の大気は有害なので、オリマーはマスクみたいなのをつけているが、これを維持できるのが30日間という事になっている。30日以内に宇宙船のパーツを完成させて脱出しないと、オリマーは死んでしまう。

　こういうストーリーなので、プレイヤーは2つの時間制限と戦わないといけない。
　まずは1日の時間制限だ。夜になるまでに、ピクミンをオニヨンのところまで連れてこないと、避難した時に置いてけぼりになる。置いてかれたピクミンはすべて捕食されてしまう。なので、きちんと1日の終わりまでにベースキャンプまで戻ってこれるような計画を立てないといけない。結構これが難しいんだよね。ついつい遠征して時間足りなくなったり…。

　そしてまた、ゲーム全体を30日でクリアしないといけないという大きな時間制限もある。上記のように、1日の制限があるからと言って、ちょっと何かをしちゃ戻ってきて夜を待つみたいなやり方をしていると、ゲーム全体のクリアが不可能になってしまう。そのへんのバランスを考えないといけない。

　宇宙船のパーツが順調に集まってくると、だんだん機能が回復してくる。出力が回復すると、新しいエリアに飛ぶ事ができる(基本的に同じエリアに何度でも行く事ができる)。またそれ以外にも、オリマーの冒険をサポートするような機能を発揮するパーツを発見する事もある。が、大体のパーツは、なんだかよくわからなかったり、名前がすごいだけだったりする。
　新しいエリアに行くと、別の色のピクミンを発見できる。最初のステージでいきなり着いてくるピクミンは、赤ピクミンだ。その他、黄ピクミンと青ピクミンがいる。赤ピクミンは、他に比べて攻撃力が高いという特徴がある。また炎にも強い。黄ピクミンは、高いところまで投げられる他、爆弾を持つ事ができる。青ピクミンは、唯一水の中に入っても溺れ死なない。
　これらの3種類のピクミンをうまく使い分け、敵と戦ったり障害物を取り除いたり道を作ったりしながら、うまくパーツ集めしていくという事になる。
　これで、私がボコスカウォーズ系だと言った意味が理解していただけただろうか(実際ボコスカウォーズのレビュー時にも書いたね)。

　私がこのゲームが大好きなのは、ゲーム性とか雰囲気とかもあるが、意外にSFしているところだろうか。
　具体的には、オリマーが毎日の終わりに書く航海日誌と、あとはエンディングで出てくる生物図鑑の説明等が、オリマーならではの考察に満ちていて、なかなか楽しい。
　それはピクミンの不思議な生態の話から始まり、敵であるチャッピーたちが、みな大きな頭から直接出た二本足と飛び出た目玉みたいな形をしているのは、そういう適応がなされたのだろうかとか考えているのが面白い。また、チャッピーとその小さいバージョンであるコチャッピーが実は全然別種の生物で、擬態によるものだとか説明されてて楽しかった。
　また、これはプレイすればすぐわかる事だが、オリマーが不時着した惑星とは、地球である。ただ、雑草や、空き缶や電池と思われる物体がかなり大きいので、オリマーがやたら小さい事が分かる。身長が3cmくらいのようだ。そして、オリマーが猛毒と呼んでいる気体は、酸素である。
　人類等は出てこないので、はっきりとは描かれないが、はるか未来の世界で人類が滅びたかなんかした後の地球、という設定なのかも知れない。だから、オリマーも何らかの知的生命体が住んでいたとは認識しているものの、それ以上は考察どまりである。このへんも面白い。

　ゲーム本体とは話が違うが、このゲームはCM曲がヒットした。「愛のうた」という曲で、「あなただけについていく～♪」という歌詞に聞き覚えがある人も多いかも知れない。地面から引っこ抜かれて、目的のために使役され、最終的には死んでいくピクミンの悲哀を歌っていて、なんかこう歌詞や歌い方がキャッチーなのと、なんとなくサラリーマンの悲哀にも結び付くところがあって、ゲームとは関係ない文脈でウケた。実際ゲームを最後までプレイしていくと、ピクミンはそこまで「健気」な生物なのだろうか…という疑問はあるが。
　まあそういう、子供にもわかりやすいCMソングという要素がウケたので、それで購入した人もいるだろうが、たぶんそういう人はついていけなかっただろうな…と思う。RTSだし。

　ピクミンは、わりとゲームキューブ初期に出たゲームで、他のソフトが少なかった事もあり、私は何度もプレイした。
　30日以内にクリアするのが目標だが、突き詰めていくと、確か20日かその前後で、全パーツを取ってクリアできた気がする(うろ覚え)。それをやるためには、初日から効率良くパーツを回収していかないといけないし、また何日目でどのエリアに行くか、という全体的な戦略も必要になる。手書きでマップを作って、色々計算したっけなあ。
　ややライト向けなRTSとして、また不思議な雰囲気を楽しむ、「すこしふしぎ」なゲームとして、それから妙にリアルで美しいグラフィックを愛でるゲームとして、私はかなり好きだった。