メーカー	エニックス	発売日	1992-09-27
機種	スーファミ	ジャンル	RPG
評価	★★★☆☆

スーファミ初のドラクエシリーズ。練り上げられたシナリオと、モンスターを仲間にできるシステムが特徴。とってもボリュームのあるゲーム。

　● 親子三代の物語

　スーパーファミコンになって初のドラゴンクエストである。
　私がスーファミを買ったのも、そもそもこのドラクエをやりたかったから、というのがあった。スーファミ発売直後からもう公表され、翌年9月の発売日までかなり待たされた。長い事、あの鳥山明のキラーパンサーを連れた主人公のイラストだけを頼りに、内容を想像したものだった。
　で、実際には私は発売日の前日かなんかに手に入れた。フライングゲットしている店で買ったのかな。でもその日は飲み会だったので、弟あての伝言で「ドラクエは入手した。今晩は酔って帰るけど、それまで待っててくれ」みたいな事を書いた記憶がある。それから帰ってからやったんだっけ。

　実際やってみると、前作に比べてそう大きく変わってない事に気づく。新ハードに移行しただけに、もちろん絵や音楽はグレードアップしているが、全体的な印象はさほど変わりがない。
　で、今回の一番の売りは「モンスターを仲間にできる事」なのだが、実際モンスターを仲間に出来るようになるのは相当先になる。だから最初の方の冒険は、従来のドラクエと大差ないという気分になる。モンスター仲間システム以外に関しては、前作までとシステム的には大差ない。ごくオーソドックスなドラクエ式移動、ドラクエ式戦闘、ドラクエ式イベントである。
　ただ、戦闘におけるちょっとした違いとして、メンバーの数が3人になったという事と、作戦の中に「めいれいさせろ」という、AIを切って完全マニュアルにするものが含まれているという事。そのため、戦略性は、前作とは違ってくる。

　今回、前作のような章立てのシナリオシステムは取り入れられていない。どちらかと言うと3に近い、スタートからエンディングまで一つながりになっている。
　(例によって以下ネタバレ多数なので、気になる人は読まないように。ていうか、やってない人は絶対読んじゃ駄目)

　シナリオ上の特徴として、主人公の子供時代から大人になるまで、しかも子供を産んでそれが成長するまでという、非常に長いスパンを持っているというのがある。ファンタシースター3のように、結婚して世代交代していくRPGはあったが、一人の主人公にスポットをあてて人生を追いかけていくというのはちょっと珍しいかも知れない。
　最初、主人公は父親のパパスについていく子供という設定になっている。パパスが何者なのかは良くわからないが、何かを求めて世界中を冒険しているらしい。で、この子供時代にいくつかのイベントがあるわけだが、最終的にパパスは敵に殺され、主人公は捕まってしまう。そして、悪の親玉である、宗教集団の手で奴隷として労働させられるのだ。
　なんつーか、悲惨な話だよね。貴重な青年時代を奴隷として過ごすとかさ。しかも悪い宗教団体が使役してるとか、個人的には素晴らしいストーリーだと思う(漫画などに置き換えて考えると、ありがちなのかも知れないが)。
　その後、そこからは脱走し、普通に冒険を続けていく事になる。

　そして途中で訪れる最大の山場が、結婚である。ただ結婚するだけではない。二人の女性から、どちらと結婚するかを選ばないといけない。一人は、少年時代に一緒に冒険した事もあるビアンカ。もう一人は、結婚関係のイベントの直前で出てくる金持ちの娘フローラ。基本的に、どちらと結婚してもストーリーが大きく変わる事はない。
　面白いのは、フローラと結婚すると、引き出物とか色々あって多少冒険が有利になるという事。だが、ストーリー的にはフローラは「いきなり出てきた」わけで、思い入れは何もない。そういう思い入れを取るか、実利を取るかというところで楽しむわけだ。
　実利的にはもう一つ重要な点がある。ビアンカにしろフローラにしろ、結婚後は普通にパーティとして冒険に加わる。基本的に、ビアンカは攻撃系の魔法が得意で、フローラは回復系が得意だ。ところが、回復系の魔法が得意な仲間というのが他にあまりいないので、フローラの価値は高い。だから色んな意味で得するのはフローラだが、男の節義としてはビアンカじゃないの、っていう作りになっている。

　結婚してしばらくすると、子供が生まれる。ところがその後、主人公とその奥さんは石像にされてしまい、何年も放置されてしまう。これも凄いストーリーだったねえ。画面的にも面白くて、石像になった主人公達が、オブジェとしてどこかの人に買い取られてしまい、庭先に飾られて、そのまま年月が経っていく。それをじっと見ていなければいけない。RPGのストーリーとしては衝撃的だ。最初にやった時、「えー、これどうなるんだろ？」と思ったものだった。
　結局、成長した子供たち(注：産んだのは男女の双子)が助けに来てくれる。ある意味、この石像イベントはご都合主義的なものだ。なぜなら、石像になってたおかげで、主人公達はまだ若いまま自分の息子・娘と冒険に行けるからだ。

　まあそんな感じで、奴隷になったり、石像になったりと酷い事もあれば、結婚したり子供ができたり、あるいは王様になったりと色々慶事もあり、波乱万丈の人生という言葉にふさわしいシナリオになっている。

　全体を通してみると、少年時代と青年時代にわけられるため、そのへんの絡みが上手く使われている。つまり、少年時代に張った伏線が、大人になってから解決するみたいなものだ。
　その究極にあるのが、物語の途中で出てくる「時間跳躍」のアイデアだ。今までのRPGではあまり例を見ない仕掛けである。これもまた伏線になっているので、全部の謎が解けてから「なるほどなあ」と思うようになっている。
　また、天空の剣などの装備を身につけられるのは、伝説の勇者だけという事になっているが、主人公は身につけられないというのも非常に重要な伏線になっている。それを身に着けた勇者がいないと、天空の塔に登れない事になっている。じゃあ誰がいったい…というところが物語のポイントなわけだ。

　このように、主人公の立場がどんどん変わっていくのがこのゲームの特徴だ。それを反映するように、主人公の呼称がどんどん変わっていく。ステータスウインドウを開くと、いつものドラクエなら「せんし」「まほうつかい」とか書いてあるところに、「パパスのむすこ」と書いてある。これが話が進むに連れ、「どれい」「にげたどれい」などと変化していく。普段はあまり注目しないところだが、面白いといえば面白い。

　ちなみに、天空の城やマスタードラゴンなどが登場するために、ドラクエ4とはシナリオ上の類縁関係があると思われる。ただし、ドラクエ1～3のような直接のつながりはないようだ。これは個人的にはとても残念だ。1～3までが一続きのシリーズで、4から新しいシリーズを始めたというのは問題ないが、5が4と繋がってない事により、ここから先単発の物語になるという事だ(実際そうなった)。
　私としては、上手くシナリオを繋げて欲しかった。

　シナリオの話はこのへんにしておくか。
　途中、奴隷から解放されたあたりで、主人公に「モンスターを手なずける」という能力がつく。敵との戦闘が終了したあと、低い確率で「○○が仲間になりたそうにこちらを見ている。仲間にしますか」みたいなメッセージが出てきて、はいと答えるとそのモンスターが仲間になる。
　仲間のモンスターも、ほぼ人間キャラと同等の事ができる。前作で時折仲間になったNPCキャラとは違う。きちんと装備などをさせられるし、成長もする。ただし成長には上限レベルがある。人間キャラが99までなのに対し、モンスターは種類によって50までとか、30までとか、15までとかある。案外使えるキャラがさっさと上限に達してしまうと、悲しくなる(私は上限に達したら必ずパーティから外し、別のキャラを育てていた)。

　モンスターが仲間になると言っても、全ての種類が仲間になるわけではない。スライムは仲間になるが、バブルスライムは仲間にならない。仲間になるモンスターについては、1種類につき最大4匹まで仲間にできる。ただし、2匹目、3匹目となると確率が極端に下がるので、たいていは1種類1匹という状態になるだろう。
　ちなみに、4匹全て名前が決まっている。例えばスライムの場合、最初に仲間にしたスライムは「スラリン」という名前だが、もう一匹仲間にすると「スラぼう」になる。更に増やすと「アキーラ」、次が「サスケ」になる。全体的に、3匹目以降の名前が変なものになっている。
　このように、仲間に出来るモンスターとそうでないモンスターがいるので、攻略情報などがない場合は苦労する。仲間にしたいと思って頑張って戦ってたモンスターが、実はならなかったりするからね。
　仲間にした敵は、パーティとして連れて歩いていると、ちゃんと自分の後ろについてくる絵が表示される。という事は、スプライトパターンがあるわけで、逆に言えばどこかでスプライトパターンが使われているモンスターに関しては仲間になる可能性がある。物語の途中、モンスターがうろうろしている街があるので、そこにいるのと同種のモンスターが仲間になるかも知れないと判断するわけだ。ただし、明らかにスプライトの色と違うモンスターが仲間になる場合があるから注意が必要だ(例えばアンクルホーンの場合、通常マップに表示される絵はブルデビルという色違いモンスターのものなのだが、実際に仲間になるのはアンクルホーンである)。

　モンスターの仲間になりやすさというのは、種類によって異なる。つまり、「こっちを見ている」状態になる確率がそれぞれ設定されているという事だ。
　例えばスライムなんかは仲間になりやすく、最初ちょっと戦うだけでこっちを見始めるが、中には何度戦ってもこっちを見ないようなのもいる。元々どのモンスターが仲間になるか分かってないというのとあいまって、特定のモンスターを狙うのは非常に精神的にきつい作業だ。
　私が一番苦労したのは、ホイミスライムかなあ。どう考えても仲間になるし(もちろんスプライトもある)、名前も「ホイミン」になる事まで完全に読めている。が、こいつは仲間になる確率が低いらしく、何度も何度も戦ってるのに仲間にならない(ちなみに、神の塔の地上外周部で粘ってた)。
　「いい加減ホイミスライム諦めようかなー」と思いながらも、「いやどうせそこまで強くないモンスターだろうし、ずっと後で仲間にしても意味無いから今仲間にしよう」という考えも起こり、葛藤しながらひたすら倒し続けた。
　で、相当長い事続けた後、ついにこっちを見た！　こっちを見た！
　ところが…あの時は動転してたのかなあ…「仲間にしますか」のところで、なんか指が滑って「いいえ」を選んじゃったんだよね…。
　その時はさすがに泣いたね。もうね、どんだけホイムスライム倒したと思ってるんだと。恐らく、塔の外を埋め尽くすくらいにまでなったホイミスライムの白骨死体の山をどうしてくれると。
　実際には、その後もめげずに戦ってたら、最初ほどの時間はかからずに仲間に出来たんだけどね。

　で、結局色んなモンスターを仲間に出来るんだけど、途中はほとんど固定だったね。キラーパンサー(イベントで仲間になる)とスライムナイトを連れている事が多かったかな。あとは、ゴーレムとか。
　個人的に最初の方で気に入っていたのが、クックルー。ブーメランを使えるし、魔法もそこそこいいのがあるので、即戦力として使える。そしてレベルアップが早く、すぐに強くなる。そのかわりに、上限レベルがあまりにも低い。だからすぐマックスに達してしまう。これは悲しい。基本的に、上限レベルの低いモンスターは、その分早く強くなりやすい傾向にあるようだ。
　キラーパンサーやスライムナイトはLv99まで上がるので、末永く仲間として連れて行ける。
　とは言え、一般的には人間キャラの方が強く、Lv99まで上がるので、馬車の大半は人間キャラで埋まるのではないだろうか。このへんはちょっとつまらなかったな。せっかくモンスター仲間システムを前面に押し出してるのだから、人間キャラの方が使い勝手がいいという風にしたのはどうかと思う。かと言ってモンスターばかり実用性があるというのも変な話だが…。

　ちなみに、はぐれメタルも仲間になる。はぐれメタルは防御力や素早さが非常に高く、全体的に強いモンスターなのだが、そのかわりにHPなど一部のパラメータが低い。
　そこで誰が思いついたか知らないけど、「スタミナのたね」のような能力アップ系のアイテムをはぐれメタルにつぎ込んで、最強モンスターを作るという手法が開発された。私がそれを知ったのはクリアより後だったけど、聞いた時には「なるほど、その手があったか」と感心したものだった。

　さて、今回もまた、カジノがある。ただ、私の大好きだったポーカーがない。正直かなりショック。
　結局今回は、スロットマシーンで稼ぐのが一般的なのかな。また、今回も商品にかなりいいものがあるので、カジノを無視して進めるのはあまり一般的ではない。まあ、頻繁にセーブのできるゲームの場合、この手の博打に負ける要素はないわけだが、それにかかる時間がね…。

　今回試みとして面白いと思ったのは、「隠しダンジョン」があるという事。ゲームクリア後にようやく入れるようになる。従って、難易度は最終ダンジョンより更に高い。だが、そこで手に入るアイテムも強いものばかりである。
　クリア後におまけがあり、それにより更に強くなれるというアイデアは面白かった。作者自身も気に入ったのか、以後クリア後の隠しダンジョンというのはドラクエのスタンダードとして定着する。

　全体を通して見ると、確かにストーリーは凝っていて良く出来ているし、モンスターを仲間に出来るシステムなども面白いは面白いのだが、何かこうちょっとダラダラしてしまう部分がないでもない。私の中では、要素的には色々劣るところのあるドラクエ2や4の方が面白かったという印象が残っている。その不満の源泉が何か、この時点ではうまく説明する事が出来なかったが、やがてこの後ドラクエ6、7と続編が出るにつれ、様々な問題点が出てくるので、それはその作品ごとに述べる事にする。ただ、この5の時点でその萌芽のようなものがあったという事だ。
　それはともかくも、スーファミ初のドラクエという事で、さんざん遊んだのは事実だ。特にモンスター集めに夢中になり、メモ帳に仲間にしたモンスターの名前を書き連ねていったのは良い思い出である。