メーカー	セガ	発売日	1991-07-26
機種	メガドライブ	ジャンル	アクション
評価	★★☆☆☆

セガが満を持して送り出した、対スーパーマリオ用秘密兵器。看板ソフトとなるべく様々な工夫がこらされているが、TOMはそこに切り込んでいく。

　● Quick or Fast

　今ではセガの看板キャラであるソニックのデビュー作で、有名なゲームだから誰でも知っていると思う。
　このゲームが出た時、やたらファミ通を初めとした雑誌で絶賛していた。いわく、スピード感があって楽しい、マリオとは違った爽快感のあるゲームだ、と。手放しでほめていたと言っていい。世間的にも評判は高かったようだ(看板キャラになるくらいだしね)。
　私自身そういうゲームは嫌いではないので、雑誌の文句に釣られて買ってみる事にした。しかし、やった感想と言えば…「そんなに面白いか、これ？」という感じだった。

　ゲーム内容としては、パックランド／スーパーマリオタイプとも言うべき由緒正しき横スクロールジャンプアクションである。ジャンプボタンとスピンボタンがあり、スピン中は相手にダメージを与える事ができる。
　特徴は、走り続けていくと加速していき、最終的には結構な速度に達するということ。それが「ソニック」の名前の由来なのだろう。下り坂を使ったりして加速し、ジェットコースターのように駆け回れるのがこのゲームの売りである。
　また、道中にあるリングを集めるのが一つの目的なのだが、別に集めなくてもゴールすればステージのクリアはできる。ただリングを持っておくと、敵にぶつかった時でもリングをバラまくだけで済む。死なないのだ。リングを持ってない時にぶつかると死ぬ。だから最低1個は持っておいた方がいいし、たくさん持っておくとバラまいたあとの回収も楽だから、あまり死ななくなる。
　リングにはもう一つ重要な役割がある。規定数集めてゴールに達すると、スペシャルステージに行ける。スペシャルステージは、内容的にはタイトーの「キャメルトライ」と全く同じゲームである。ステージ全体をくるくる回すことによって、重力で落ちる主人公を上手くゴールに導きましょうよ、と。これがまたあちこちに「偽ゴール」があって、それに触れるとステージが終了してしまう。そうしないように慎重に進めて、真のゴールにたどり着くと、「カオスエメラルド」というアイテムがもらえる。これを集めないと、エンディングにたどり着けないのだ。

　上記を踏まえて、批判意見を述べさせてもらう。
　このゲームの「売り文句」は、もちろんスピード感である。最高速に達すると、ガーッと走っていき、画面がビュンビュンスクロールしていく。確かにスーパーマリオにはなかった仕掛けだし、それを押していこうという気持ちは分かる。
　しかし、そういう目で見た感じから受ける「スピード感」とは裏腹に、このゲームは非常にテンポが悪くてストレスのたまるゲームだと私は感じている。そのあたりを、スーパーマリオワールドなどと比較してみよう。

　まず走った時の爽快感だが、確かに最高速は速い。そのかわり、「最初の数歩」がとても遅い。ゆっくり歩き始めて、だんだん加速していき、最後猛スピードになるという具合になっている。
　だから走り続けている時はいいんだけど、細かくうろうろする時は、スーパーマリオよりもイライラする。スーパーマリオではBダッシュ(スーファミ版ではYダッシュ)を使えば、数歩で最高速に達する。こちらの方が、細かい移動に向いている。
　でもって、ゲーム内容的にガンガン走り続けた方が有利という風になっているのなら、それでも構わないのかも知れない。しかし現実には、細かく止まったり歩いたり、左右にウロウロしたりという事を要求されるようになっている。だからむしろ私の中では、ソニックは「反応の鈍いキャラ」のようなイメージになってしまっている。
　なぜ最高速で突っ走るプレイばかりにならないのかというと、理由がある。
　一つは単純で、敵に激突するとやられるからである。レースゲームなどでは、高速状態でミスをしても、たいてい減速するくらいで済むが、このゲームはその場でビタッと停止してしまう。また視点も真横なので、高速状態で敵にぶつかるかどうかは半ば運になってしまっている。敵以外にも、障害物に激突したり、穴に落ちたりも多い。だから高速移動の爽快さよりも、いちいち足止めを食らうイライラの方がかなり大きい。
　もう一つ、システム説明のところで書いたとおり、「リングをたくさん集めてエメラルドを手に入れないとエンディングに行けない」という仕組みも、高速移動を妨げている。構造的に、素早くクリアするよりも、あちこち探索してリングを入手していかないといけないようになっているのだ。
　あとはもう、高速移動にゲーム的な意義が何もないというのも挙げられるね。これ言ったらおしまいレベルなんだけど。確かに高速移動自体は気持ちいいのかも知れないけど、そうする事で何か有利になる事はない。上記に書いたとおり、敵に激突する危険を冒すよりかは普通に進んだ方がいいし、それに細かくあちこちを探ってリングを探し回らないと、そもそもクリアができない。
　まあそういうわけで、細かく移動してまわるという目的に対し、動作の鈍いこのゲームでは、非常にストレスがたまる。

　また、ステージの構成的に同じところを何度も何度もやらされる羽目になる(死んだりとか、落ちたりとかで)場面があまりにも多く、スピードをいかしてバンバンクリアしていく楽しさというのは、はっきり言って無い。

　だから結局、制作者が意図していたであろう事と、それを実現する手段が噛み合ってないんだよね。
　スーパーマリオには無い、高速移動の楽しさを盛り込んだゲームを作りたい。それはわかる。しかし、単にスーパーマリオの最高速度を上げただけのゲームだったらどうなるか。「そりゃ敵に激突しまくるだろ」とか、「あのゲームは何かを探したり、エレベーターを待ったりするとかいう場面が多いから、最高速があっても仕方ないだろ」という批判が出てくるだろう。ソニックはまさにそういう状態になっている。
　だから、例えば本当に速度をメインで押していきたいのなら、「ステージ中に隠されたリングをたくさん集める」などというちまちました目的は取り入れるべきではなかった。ここが最高にチグハグなのだ。リングを集めるのが目的なら、スーパーマリオにおけるBダッシュのように、クイックな移動手段を取り入れるべきだ(しかしそれではただのスーパーマリオだけどね)。そうでないのなら、例えば早くゴールに達した方が真のエンディングに近づくなどという仕掛けにするべきだった。
　そのどちらでもないソニックは中途半端な出来であり、私は全く評価する事が出来ない。キャメルトライ面だけが唯一楽しい。