メーカー	任天堂	発売日	1981
機種	アーケード	ジャンル	アクション
評価	★★☆☆☆

任天堂の看板キャラクタ「マリオ」が、ドンキーコングの妨害をかわして姫を助けに行くというアクションゲーム。小さいキャラ、少ない色数ながら工夫された絵柄で、わかりやすいキャラクタ性を打ち出した宮本茂の出世作。

　● 世界観を持ったゲーム

　この作品から今に至るまで任天堂の看板キャラクタで在り続ける「マリオ」が、ドンキーコングというゴリラにさらわれた女性を助けるというアクションゲーム。ドンキーコングは建設中(？)のビルかなんかに立てこもっており、樽を投げつけたりして妨害してくる。マリオはそれを避けてビルを25m、50m、75mと登っていき、女性を助ける。
　ちなみに、後の「スーパーマリオブラザーズ」で「ピーチ姫」として設定されるが、この頃この女性に名前はない。ピーチ姫と同一人物かどうかもわからない。この頃は単に「レディ」と呼ばれている。映画「キングコング」で、キングコングに女性がさらわれるが、そのイメージだと思われる。
　更に余談として、このドンキーコングは元々マリオのペットである、という設定があるらしい。つまり、自分のペットが女性をさらってしまったので、助けに行っているということだ。

　このゲームの素晴らしいところは、まずキャラクタ表現である。この頃のゲームのハードウェアと言えば、キャラの大きさや色の数に厳しい制限があり、いかに設定や公式イラスト上で多彩な設定をしていようが、それを画面上で表現する事が難しかった。前回扱ったナムコの「パックマン」はそこで割り切り、複数色をキャラクタに割り当てられるハードながら、単色にして動きだけで主人公を表現して成功していた。だが、それ以外にキャラクタを上手く表現しているゲームというのはなかなか無かった。
　ところがこの「ドンキーコング」は、例えばマリオのキャラクタも上手くデザインされている。マリオというキャラのデザインはゲーム化を見越して設定されている。赤と青のオーバーオールといういでたちも、少ないドット数で表現した時に手足などの表現がうまく行くように考えられている。このへんは、デザインを専攻して任天堂に入社してきた宮本茂という一人の天才の感性による部分である。

　もう一つ素晴らしいところと言えば、このゲーム独特の「世界」が表現されている、という所だ。なんと言うか、不思議な事の起こる、独自の世界がそこに設定されている。例えば、樽が燃えると火の玉になって追いかけてくるとか、奇妙なジャッキ風の物が飛び交う中進まなければいけないとか、現実世界とは微妙にズレた何かが上手く表現されているのを感じる。ま、当時のゲームと言えばみんなそんな感じの不思議世界ばかりなんだけど、それがうまくいってる場合と、いってない場合がある。ナムコや任天堂はその点、非常に世界作りがうまいように思う。

　また、1周あたり4つの面があるわけだが、それぞれの面が違うゲーム性を演出しているという所も特筆したい。この頃のゲームは、場面等が変わってもあまりゲーム性が変わらないという物が多いが、この「ドンキーコング」ではステージごとに背景ごとかなり変わる。
　例えば最初のステージ(25m)は、おなじみ樽よけ梯子登り面だが、次の面はカレー(？)がベルトコンベアに乗って流れてくるカレー面で、次はジャッキ風の物が飛び跳ねてくるエレベータ面、そして最後は火の玉を避けつつジョイントを全て外すのが目的、というそれぞれ異なったゲーム性を備えている。しかも、全ての面を通じてキャラクタの操作は統一されている。このように、「統一された操作で様々なプレイ・楽しみ方をさせる」というのが一つの宮本茂のテーマ、あるいは特色だと思っている。

　このゲームは大人気を博し、この頃少しずつ出来始めた「ゲームセンター」(「インベーダーハウス」などという良く考えるとおっかない呼び方のところもあった)はもちろん、駄菓子屋やスーパー等でも稼動した。
　となると、当然私の目に触れる事も多くなる。駄菓子屋やスーパーに導入されると、一回のプレイが10円とか20円とか非常に安い値段で出来るため、いくら貧乏な私と言えども全くプレイできなくはない。ただし、例によって私はゲームが下手なので、全然進めないのだが。
　ただ、私の「ドンキーコング」に対するゲームとしての評価はそんなに素晴らしく高くはない。私はこのレビューで、統一された操作系による多彩なステージという点を高く評価したが、小さい頃の私の考えは逆だった。私は、ゲーム性も統一されてるべきという何か潔癖な考えの持ち主であった。私は、左右対称・王道・統一性といった物に美しさを感じる子供だったのだ。